【読書感想文】後輩の新刊を読んだ件

どうも。

 

毎度お馴染み部活時代の後輩Tがコロナで大変な中、5冊目の同人本を出したとのこと。

Tの本を約4冊所有しているファンとして買わない選択はない、ということでネット通販にて購入。

 

マジカル・シュガー・ファクトリー - 有色リトマス - BOOTH

 

無論届いた当日に読んだ訳だが、相変わらずの素晴らしいクオリティだったので全世界へ感想を発信するに至った。

 

◯元ネタ

前回感想を書いた作品と同じくアニメ「KING OF PRISM Shiny Seven Stars」が原作。

 

【読書感想文】後輩の同人本を読んだ件 - gohan’s diary

 

今回はその中でもアプリゲーム「KING OF PRISM プリズムラッシュ!LIVE」内イベント『魔法学園物語〜寮対抗杯!スリー・スペクトル〜』を基にした作品となっている。

 

イベント内では最上級生がメインの話だったが、イベント時の設定を活かしたカジガリ(カケタイ)のやり取りが非常に秀逸。自分もTのスマホを借りイベントストーリーを見せてもらったのだが、不意に普段と違う様子を出してくるタイガへ思わずニヤけてしまった。ヲタクが歓喜して本を出したくなるのも納得のストーリーである。

 

◯あらすじ

ゲルキャッシュ寮にて寝所を共にするタイガとカケル。カケルの部屋で甘い日々を過ごすようになって一年以上が経過していた。順調に見えた日々だがタイガは甘さにかまけ気の緩んだ不安定な状況で変身魔法を繰り返した結果、トラの魔法生物であるトラチが爆誕してしまう。

トラチを受け入れ実の子どものように可愛がる2人だが、カケルとの時間を奪われトラチへ嫉妬するタイガ。トラチが現れて1週間経った昼休み、思わず本心を零して甘えるタイガとその素直すぎる態度にオーバードーズするカケル。カケルの愛がトラチとタイガを包み平和な時間が過ぎていく。

3人での生活がすっかり定着したある日の朝、相変わらず変身魔法が安定しないタイガは目が覚めるとトラの耳と尻尾が生え半獣化してしまっていた。留まるところを知らない2人の甘い時間が、始まる。

 

◯感想

今回は健全に全年齢向けエロ本。

いつもよりかは物語のボリュームが少ない為、軽くお菓子を摘むくらいの感覚で読み始めたのだが思いの外濃厚で驚いた。例えるならガトーショコラやパウンドケーキといった、気軽にいけるけど思いの外食べ応えがあり気付いたらお腹いっぱいになっている類のお菓子を食べたような読後感。

 

とりあえず話が甘すぎてオーバードーズ、思わず自転車で淀川まで走ってしまった。(蜜じゃないからセーフ理論)

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自分のキャパシティを超えることにぶち当たった時圧倒的に大きなものを見て心を落ち着かせたくなる感覚、あると思います。

 

全体へ感じたこととして、これまでの作品のリアル路線からは大きく離れたファンタジー路線ということ。元々が魔法学園というファンタジーな世界観であることに加え、世界観をしゃぶりつくす為想像の余地がある設定はとことん拡大解釈している。その結果冒頭から末尾までトッポのように甘々な内容となっている。トラチの爆誕設定は「そういう風に登場するのかぁ」と感心し、タイガの豹変っぷりには「素直すぎひんか!?」と思わず突っ込んでしまうほど入り込んでしまった。

その一方で、原作設定を守るところは守る絶妙なバランス感覚が流石だった。カケルの水魔法で檻を作る部分、実際にアプリの中で行っていた気がする。気のせいだったら知らん。またトラチのタレ目がタイガと共通していること、しめ縄をタイガが好みそうなことには気付いてなかったのでググりにいってしまった。原作設定を踏まえるヲタクしてくれることで、ファンタジー世界であってもリアルな想像を湧き立たせてくれた。

 

↓↓↓↓以下個別感想↓↓↓↓

 

・表紙

本文が甘ければ表紙まで甘い、そんな表紙となっている。T曰く印刷会社のオプションでデザインを依頼したら可愛すぎてひっくり返ったとのこと。かわいいもの×かわいいもの=すごくかわいい。

個人的に好きなのが表紙の手触り。リボン包装されたかのような感触で、サイズ感も相まってずっと手に取っていたくなる触り心地となっている。

 

・遊び紙

鮮やかなピンクと砂糖をまぶしたように輝くラメが絶妙にコラボしており、この作品の突き抜けた甘々っぷりを強く象徴している。初見時は表紙を開いた瞬間に引き込まれ、暫く見惚れてしまった。

紙が分厚過ぎず、頑張れば扉のタイトル文字が透けて見えるのも二度美味しい。

 

・ツッコミについて

トラチ爆誕時、トラチと見事な掛け合いを披露するタイガ。実際にありそうなやり取りで好きな場面。トラチトラは確かにややこしい。

更にトラチが暖を取りたかったのではという天然ボケからノリツッコミまで披露するタイガ。アホ可愛い。隠しきれないTの関西人センスが光るワンシーンとなった。

 

・素直すぎるタイガ

タイガといえば頑固で直情的で不器用で。そんな彼だからこそ多くのファンを魅了しているわけだが、素直になってしまったらそれ何て萌えキャラ???となるのは当然ではないだろうか。

 

カップルするタイガ、甘えと信頼が込められた笑みをするタイガ、敬語でおねだりするタイガ、この世界線でしか見られない姿がとことん描写されていてやはりニヤけずにはいられない。

 

カケルの様子を伺いながら甘えるタイガは素直を通り越してあざとささえある。Tの思ってる3000倍は甘々なので読み手の身になって頂きたい。

 

・特別なカケタイ

前述の通り、素直すぎるタイガの破壊力は計り知れずカケルがオーバードーズするのも当然である。一方でこの世界線はタイガの素直さを受けカケルの態度も変化している様に感じられた。

 

自分の中でカケルといえば、タイガを茶化したり焦らしたりしつつ牙を剥く(?)イメージである。がしかし、素直なタイガの前では焦らすというよりひたすら甘くどこまでも甘やかすカケルになっていた。この魔法学園ストーリー、甘々なバカップルのカケタイを愛でられる特別な世界線なのでは、とまで感じられる。

 

とりあえず甘いバカップルぶりと随所に散りばめられた甘い比喩表現とが相まって無事オーバードーズしました。

 

・トラチの可愛さ

泣くトラチ、はしゃぐトラチ、誇らしげなトラチ、食べ物を追いかけるトラチ、トラチが登場する度にほっこりした気分にさせられる。ただでさえ甘い物語の甘々っぷりに拍車をかけている。トラチ単体で可愛いのにバカップルカケタイと絡んで可愛くない筈がない。かわいいもの×かわいいもの=すごくかわいい。

 

キンプリ歴の浅い自分にとってトラチ=ベストテンというイメージだが、ベストテンを何度も見に行った甲斐あってカジガリ×トラチを鮮明にイメージすることが出来た。

 

・タイガ半獣化

これを起承転結の結に持ってくるのがエロい。卑猥な意味ではなく。

 

この作品全体的に漂っているのが、Tの考えた最強のカジガリを読者へ披露しているかのような雰囲気なのだが、その中でも最も強く自慢のカジガリみを放っているシーンがこの半獣化場面。まさに「ぼくのかんがえたさいきょうのかじがり」。

 

だって尻尾とか耳とか確実に敏感なやつですやん。

ストリート系とのギャップもハンパない。

エロ本らしさを最後の最後で発揮し、私たち読者を甘い余韻に浸らせてくれる。オーバードーズ不可避。

 

タイガ半獣化を書きたいが為にこの作品が生まれたのでは、とまで思わされるシーン。文章を通じTのドヤ顔が透けて見えてくる。

 

・雲丹と栗(ずっと真夜中でいいのに。)

昔の同人BLはイメージソングが設定されているとのことで、腐女子歴が長いTもその文化を毎度踏襲している。今回は珍しく知ってる曲がイメージソングだったので読み終わって聴いてみたのだが。

 

めちゃくちゃ良かった…

 

元々知ってるはずの曲がトラチとタイガのための別の曲に聞こえた。読後に聴いた為かEDのように感じられ、夕暮れ時川沿いを歩く1人と1匹のイメージが胸に染み渡った。古の腐女子のセンスが良すぎる。これまでの分も聴きます。猛省。

 

・その他雑記

本文とは何の関係もない感想なのだが。

同性カップルで同居しても問題ない学校、素晴らしいなと。

自分の母校では同性カップルが校舎内でみだらな行為した結果、退学になったという事例があった。魔法学園はそんな規則に縛られないしペットも飼える。これぞプリズムの煌めき。フリーダム。

 

◯おわりに

これまでのTの作品と路線が違い過ぎたあまり、無意識のうちに過去作品と比較するような感想となってしまった。これまでの作品であれば、原作設定や現実世界へ忠実な世界でのカケタイを、時にはブラック、時には切なく振り切れた物語となっていた。しかし今回はファンタジーな世界観に加えて設定等キャラが崩壊しないギリギリまで非現実路線なカケタイがひたすら甘い方向に振り切れた物語である。

 

ここに共通してくるのが振り切れた物語という点。これまでの作品を振り返ると、儚い恋、ディストピア、メリバ、魔法学園と見事に一貫性がなく只の情緒不安定な人なのだが。そのどれもが突き詰められていて、濃密で、振り切れっぷりがTの持ち味だと考える。

 

元々Tの本を購入した時、後輩が何か面白いことしてるなくらいの軽い気持ちで再販版を購入したのだが、その作品の振り切れっぷりに見事に引き込まれてしまうこととなった。他のブログ記事にもある通り、最近色んな本を読むようになったがここまで振り切れてる物語、切り込んでくる文章はないとまで思える。

 

後輩Tにとって、「KING OF PRISM 」というコンテンツとしても、コロナの影響としても先行きが不安な状況であることは明白だが。Tの振り切れっぷりはどこへ向かうのか、行先を見届けるべく活動を応援していきたいと思わせてくれるようなTの魅力溢れる一冊だった。

 

ではでは。