【読書感想文】「カラフル」読んでみた

どうも。

 

コロナ自粛の影響で読書にますますのめり込んでいる23歳です。

読書をするようになって気付いたことが、意外と周りの人読書しているなあということ。

例えばインスタでおススメ本の質問をしてみたら思わぬ人から本を紹介されたり、会社の人と本の話で盛り上がったりと、もっと早くから読書しておけば良かったと思う今日この頃ですが。

 

そんな自分の心に刺さった、後輩からのおススメ本の感想です。

 

 

カラフル (文春文庫)

カラフル (文春文庫)

  • 作者:森 絵都
  • 発売日: 2007/09/10
  • メディア: 文庫
 

 

 

【あらすじ】

死んでしまったはずの主人公の魂はひょんなことから生前の罪を思い出す挑戦へ挑むことに。

挑戦の内容は天使ぷらぷらの案内の元人間界にいる誰かの体を借りて人生をやり直す中で、自身の罪を思い出すというもの。

主人公は自殺した少年”小林真”の体に入り込み真として生きることになる。

”小林真”を取り巻く家庭、学校での問題を知り辟易とする真。

周囲の環境を他人事に捉え、ためらうことなく生きる真は様々なトラブルに巻き込まれつつも

周囲からの見方が変わっていく。
1人の友人と出会い、父親、兄、片想い相手、そして母親、彼らとぶつかり合うことで真から周囲への見方もまた変わっていく。

 
本当の真の魂に戻ってきてもらう為、己の罪を思い出そうとする主人公。

そして物語は結末を迎える。

 

※以下ネタバレ

 

【感想】

◯全体への感想

 

等身大な登場人物たちによる、平凡で等身大な物語という印象。

真の周囲の人物は、不倫する母親、利己的な父親、真を邪険に扱う兄、援交をする片想い相手ひろか、といった具合に裏の一面を持っていて真を自殺に追い込んだ訳だが、物語が進む中で彼らなりの思い、等身大の一面が見えてくる。

一方で、主人公真も特別心が脆く自殺してしまった可哀想な少年というわけではなく、両親譲りの性格がまだ未熟だったことと偶然が重なってしまい自殺という選択を取ってしまった普通の少年である。

そんな等身大に生きる登場人物を知ることで等身大な自分自身のことも受け止めたくなる、平凡な自分に寄り添ってくれる物語だと感じた。

 

◯誰しもが変わってて、それがふつう

「この世でもあの世でも、人間も天使もみんなへんで、ふつうなんだ。頭おかしくて、狂ってて、それがふつうなんだよ」

 

引用:森絵都(2007)『カラフル』文春文庫、p.186

美術部に所属する真が、彼の描いていた絵を壊そうとするひろかに向けて話しかけた際の一言。

彼女は、きれいなものが好きな自分と壊したくなる自分、時々残酷になる自分、やさしい自分と意地悪な自分、長生きしたい自分と死にたい自分、相反する自分におびえおかしいと感じていた。

周囲への見方が変わり、人間は色んな面、様々な色を持っていていることが分かってきた真だからひろかを肯定できる訳だが…

 

 

 

染みる。

 

 

 

自分自身、本当の自分のことが掴めず苦しくなる時は多々ある。他の人と違う自分でいたい時もあれば普通でいたい時もある。そんなどちらの気持ちにも当てはまるセリフで心にピタリとはまったセリフだった。

 

他の人の心を覗くことは出来ないが、少なくともこの物語の人物達、自分がぶつかり合った人達は皆、心にきれいな色も汚い色も持っていると感じる。

その色どれもが真実で、世界が色鮮やかで眩しいから目が眩んでしまうけれど、誰もが同じことを感じている、そんな安心感を得られるセリフだ。

 

◯誰もが心に傷を負っている

真だけじゃない。

唱子だけでも、ひろかだけでもない。

この大変な世界では、きっとだれもが同等に、傷ものなんだ。

 

引用:森絵都(2007)『カラフル』文春文庫、p.228

自殺する前の真に片想いしていた女子、唱子が自身の想いの丈を真へぶつけるシーンにて、彼が感じたこと。

真が周囲の人物から傷つけられた一方で、魂が入れ替わり立ち振る舞いが変わったことで唱子も傷ついていたということに彼は気付く。

 

 

人間は常に他人と支え合って生きているために、気付かぬうちに誰かを救っていたりすることがある。

同じように無意識のうちに他人を傷つけてしまうこともあるわけで、理想は他人を傷つけないようにすべきだが完全に無くすことは出来ないだろう。その代わり表面的には隠れている他人の傷へ敏感になり労わる必要がある。

 

また、自分の傷もまた誰かに分かってもらえる筈で被害者ぶる必要はない。心の傷は分かち合うことができるのだ。

 

◯他人事のように生きる

自分の本当の気持ち、本当の色は濃すぎて簡単に他人には見せられない。

その結果、真の家庭ではお互いが思ってることを出せずにすれ違い、真を自殺へと追い込んでしまった。

その後魂の入れ替わった真にとって、小林家の問題は他人事だったために本当の気持ちをぶつけることが出来た。

 

何事も難しく考えすぎる自分にとって、これまた染みる生き方である。

一瞬一瞬の物事を深く真剣に受け止めて反応する、真面目すぎる自分らしい生き方ではあるけれど直感を頼りに伸び伸びと生きることの大切さを感じることができた。

 

◯タイトル「カラフル」の意味

世界も人間も実に色鮮やかで時に眩しく感じる時もあるけれど、あらゆる物が懸命に輝いている。そんな意味が込められたタイトルとなっている。

 

 

この物語の中では、人の心の色がカラフルであることを伝えてくれているが、心の色が増えるのはいつだろうか。

自分は心の傷が増え、傷を乗り越えた時ではないかと考える。

前述の通り誰しもが心に傷を負っている訳だが、傷が多いほど同じ傷を持つ他者へ寄り添うことができるのではないか。傷が多いこと、傷を消さないことは恥ずかしいことではない。

例えば傷だらけのガラスが光を受けて多彩な光を反射するように、負った傷の数だけ心がカラフルになるのでは、と感じている。

 

【終わりに】

この本を読んでまず感じたことが、もっと早くにこの本を読んでいれば良かったという後悔である。

 

主人公もまた物語の中で様々なことを後悔しているが、一番の後悔は自殺でありそれ以外のことはおおよそ取り返しをつけることが出来た。つまり死ぬこと以外はリカバリーがきくということ。

 

私が日ごろから心がけていることがある。

自分が興味を持ったものには全速力で臨むということだ。

新しい情報に疎く、一つのコンテンツに出会うまでは他の人と比べて遅い自分だが、気付いてからの行動力は誰にも負けない自信がある。

気付いた時が人生の中で一番早いタイミングであり、もっと早くに…と感じた分だけ全力でのめり込むことで取り返せないことはきっとないはずだ。(個人の感想です。)

 

もっと早くに読書していれば、そう感じた分だけ読書を重ね様々な物語の色に触れたいと思う一冊でした。

 

ではでは。